SIer(エスアイヤー)とは、「システムインテグレーター(System Integrator)」の略語で、システムの企画・提案から要件定義、設計、開発、テスト、運用・保守まで、システム開発に関わるほぼすべての業務を請け負うIT企業のことです。
SIerは、企業の成り立ちや業務内容によって主に5種類に分けられますが、その中でも特に「独立系SIer」は、”親会社が存在しない”という特徴を活かし、顧客のさまざまなニーズに対して柔軟に対応できる強みがあります。
そこで今回は、日本の多くのSIerが該当する「独立系SIer」について、任せられる業務内容、活用する3つのメリット、優良な独立系SIerの選び方などについて詳しく解説します。
独立系以外のSIerの特徴や、SIerとSESの違いについても触れていますので、SIerへのシステム発注を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.SIer(エスアイヤー)とは?
SIer(エスアイヤー)とは、「システムインテグレーター/System Integrator」の略語で、システムの設計・開発・運用・保守を請け負う企業のことを指します。
顧客の要求に基づいて必要なシステムを企画・提案し、要件定義・設計・開発・テスト・導入・運用・保守まで、システム開発における一連の行程を担当します。
「システム開発に関わるほぼすべての業務を請け負う企業」と捉えると分かりやすいでしょう。
近年、多くの企業においてIT活用による業務効率化が進められていますが、日本では「少子高齢化による労働者人口の減少」や「IT技術の急激な進化への対応遅れ」に伴うエンジニア不足が深刻化しており、自社システムを自分たちだけで開発できる企業はそう多くはありません。
そこで、SIerが顧客企業において必要なシステムを一緒に考え、導入から実際の運用まで全体的にサポートしていく役割を担っているのです。
SIerとSESの違い
SIerと混同されがちな言葉として「SES(エス・イー・エス)」があります。
SESとは、「システムエンジニアリングサービス/System Engineering Service」の略語で、顧客に対してエンジニアの技術力・労働力を提供するサービスのことです。
SIerが「システム開発を請け負う企業」を意味するのに対し、SESは「エンジニアの技術リソースを提供するサービス」のことを指します。
SIerとSESで大きく異なる点としては、「契約形態」と「報酬の対象」があります。
SIerには「請負契約」が適用され、エンジニアの労働時間に関係なく、実際の成果物であるシステムそのものに対して報酬が発生します。
一方、SESには「準委任契約」が適用され、エンジニアの働いた時間がそのまま報酬となります。SIerとは異なり、成果物に対する完成義務を負うことはありません。
自社の課題解決に向けて「システムそのもの」を求める場合はSIer、人員不足を補うために「エンジニアのスキル・技術力」を求める場合はSES、といったように、両者の間で活用の目的や役割が明確に異なることを理解しておきましょう。
2.SIerの種類
一口にSIer企業といっても、おおまかに分けて次の5種類があります。
- メーカー系
- ユーザー系
- コンサル系
- 外資系
- 独立系
メーカー系
メーカー系SIerとは、コンピューターや家電といったハードウェアを製造する大手メーカー企業の情報システム部門が分社・独立してできた子会社やグループ会社のことを指します。
親会社のハードウェアを活用したシステム開発やソリューションの提案に強みを持ち、幅広い案件への対応が可能です。
ただし、ハードウェアメーカーを親会社に持つという特性上、案件によっては他社製品を用いた方が良い場合でも、基本的には親会社の製品を採用しなければならないという制約に縛られます。
ユーザー系
ユーザー系SIerとは、銀行・保険・通信・鉄道・商社など、IT以外を本業とする大手企業から情報システム部門が独立してできた企業のことを指します。
主に、親会社やグループ会社向けにITソリューション提案やシステム開発・保守を行うことが多いですが、親会社の業界知識を活かし、外部の一般企業に対して幅広くサービスを提供する企業もあります。
とは言え、基本的には親会社のシステム開発・保守案件を請け負うことが多いため、メーカー系SIerほどではありませんが、どうしても親会社の意向や制約を汲み取らなければならないケースがあります。
コンサル系
コンサル系SIerとは、システム開発の中でも上流工程にあたるコンサルティングを主に担当する企業のことを指します。
顧客企業の経営・業務課題に対して、システムの導入企画やIT戦略を立案したり、システムの要件定義を行うことを得意としており、「開発」を中心とした下流工程よりも、「計画立案」を中心とする上流工程のサービスに特化しています。
外資系
外資系SIerとは、アメリカやヨーロッパなどの海外に本社を置くIT企業が日本法人を設立し、日本に向けてサービスを展開している企業のことを指します。
ほとんどがグローバルに名の知れた海外企業の日本法人で、いずれも企業規模が大きく、技術力・ブランド力を兼ね備えた有力なSIerです。
特に、顧客に対してまずコンサルティング業務から携わり、パートナー企業と連携して開発業務を進めるケースが多く見られます。
独立系
独立系SIerとは、親会社を持たない独立したSIerのことです。
日本のSIerのうち、約9割は独立系SIerが占めており、当社コンピュータマネジメントもこの「独立系」に分類されます。
最大の特徴は、親会社やグループ会社からの制約を受けないため、特定の業界・業種・製品に縛られず、比較的自由にビジネスを展開できる点です。
独自の方針でシステム開発やソリューションの提案を行い、顧客ニーズや市場の変化に合わせて柔軟に対応を行える点こそが、独立系SIerの魅力といえます。
3.独立系SIerに任せられる業務内容
独立系SIerに依頼できる仕事内容としては、次の4つが挙げられます。
- システムの企画
- システムの要件定義
- システムの設計・開発
- システムの運用・保守
システムの企画
「システム企画」とは、企業が現状抱えているビジネス課題を解決するために、あるいはビジネス上の目標を達成するために、「どのようなシステムが必要か」を検討し、関係者間で合意を取るプロセスのことです。
通常は、システム開発の発注者である顧客側が主体となって行う作業ですが、顧客自身も気付いていないニーズや、洗い出しきれていない課題が残っている可能性もあります。
専門家であるSIerと協力しながら進めることによって、顧客自身も見落としている隠れたニーズや課題に対する解決策も含めた最適なシステムを提案してもらうことができます。
独立系SIerであれば、親会社から使用するハードウェアやソフトウェアの制限を受けることなく、優れた製品・ツールを自由に使って顧客に寄り添ったシステムの提案が可能です。
システムの要件定義
「要件定義」とは、システム企画の段階で出てきたさまざまな要求内容に基づき、それらの要求を実現するために、システムがどのような機能や性能を持つべきか定義するプロセスのことです。
顧客の現状業務プロセスを詳細に分析したうえで、システム化の対象とする業務範囲を決め、システムに必要な機能・性能を明確化していきます。
予算・スケジュール・技術的な制約などがある中で、顧客から出された「◯◯したい」という要求内容をすべて叶えることは難しいため、「実際にシステムとして実現できるかどうか」を要件定義の段階で丁寧にチェックしていきます。
なお、要件定義に対する最終的な責任は、システム発注者の「顧客側」にあると言えますが、要件定義を進めるにあたっては技術的な観点が必要不可欠であり、ITに精通していない顧客側が自力で実施するのは難しいことから、専門家であるSIerが「支援」する立場として携わるケースが多くなっています。
システムの設計・開発
設計工程では、要件定義で決定した内容を具体化するための作業を行います。
一般的に、設計は「外部設計(基本設計)」と「内部設計(詳細設計)」の2つの工程に分かれます。
操作方法や画面レイアウト、データの出力方法など、ユーザーが実際に直接見て触れるシステムの外側の部分に関して定めるのが「外部設計」、外部設計をもとにシステム内部の動作や機能、データのやり取りなど、ユーザーの目から見えにくい詳細な部分の設計を行うのが「内部設計」です。
設計工程が完了したら開発工程へと移り、設計書とコーディング規約(=ソースコードを書く際の共通のルールをまとめた文書)に沿ってプログラミングを行います。
システムが設計書通りに動作するか、不具合(バグ)がないかを途中で何度もテストし、必要に応じて修正を行い、顧客側の最終的な確認を経てリリースへと至ります。
設計や開発作業自体はSIerが行いますが、出来上がった設計書の内容やテスト結果を確認したり、完成したシステムが実際の利用環境(またはそれに近い環境)で問題なく動作するかどうかをリリース直前に確認する「ユーザー受け入れテスト」を行うのは、顧客側の役割となっています。
システムの運用・保守
SIerには、システム運用開始後のサポートや保守業務も依頼することができます。
一連の工程を通じて開発の経緯をすべて把握しているため、システムに問題・不具合が生じた場合や、ビジネスモデルの変化に合わせて新しい機能を追加したり、既存の機能を改良したいような場合でも、柔軟に対応してもらうことができます。
その他、稼働状況の監視や定期的なメンテナンス、障害対応、セキュリティアップデート、運用マニュアルの整備、顧客からの問い合わせ対応、さらなる改善提案など、システムの安定的な運用に向けた細かなサポートを任せられます。
4.独立系SIerを活用する3つのメリット
独立系SIerとの契約におけるメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 中立的な立場からの最適なソリューション提案
- 中小企業ならではの柔軟な対応・スピーディーな意思決定
- 専門性の高いサービス・密接なコミュニケーション
中立的な立場からの最適なソリューション提案
独立系SIerは親会社を持たないため、特定メーカーの製品やプラットフォームに依存せずに、顧客が抱える課題・悩みに対して本当に最適な解決策を提案できます。
メーカー系やユーザー系のSIerと異なり、親会社の製品の使用を優先する必要がないので、幅広い選択肢の中から使う言語や技術、ツールを柔軟に組み合わせ、顧客にとって最善のソリューションを提案することが可能です。
これにより、コスト効率が高く、かつ本当に必要な機能を兼ね備えたシステムの構築が期待できます。
中小企業ならではの柔軟な対応・スピーディーな意思決定
独立系SIerは比較的中小規模の企業が多いため、大手企業と比較すると意思決定のスピードが速く、顧客のニーズに対して迅速かつ柔軟に対応できます。
ビジネス環境の急速な変化に伴い、プロジェクトの途中で要件の変更が発生した場合でも、大手企業のような複雑な承認プロセスを経ることなく、こうした変更に素早く対応することができます。
迅速な意思決定により、プロジェクトの方向性を柔軟に調整し、最新のニーズに合わせたシステムを提供できる点は、ビジネス環境が目まぐるしく変化する現代において大きなメリットといえるでしょう。
専門性の高いサービス・密接なコミュニケーション
多くの独立系SIerは、特定の業界(金融・保険・製造・不動産など)や技術分野(AI・IoT・クラウドなど)に特化したサービスを展開していることが多く、その分野における深い知見と経験を持っています。
これにより、業界特有の課題やトレンドを熟知したうえで、顧客の独自ニーズに合った最適なソリューションを提案できます。
また、独立系SIerは大手企業と比べてクライアント数が少ない分、顧客1社1社とより密接な関係を築くことができます。
顧客それぞれの事業内容や組織文化をより深く理解し、真のパートナーとして長期的な関係を構築することが可能です。
5.優良な独立系SIerの選び方
SIerの中でも圧倒的に企業数が多い独立系SIerの中から、自社にとって最適な発注先を選定するためには、次の5つのポイントを意識するようにしましょう。
- 豊富な実績と専門性
- 総合的なサービス提供能力
- プロジェクト管理とコミュニケーション能力
- 品質保証とセキュリティ対策
- 財務的安定性と事業継続性
豊富な実績と専門性
SIerの実力を評価するうえでは、「類似プロジェクトの実績」(=自社に近い規模・業界のプロジェクト成功例はあるか?)や、「長期顧客の存在」(=継続的な取引関係にある顧客は存在するか?)は重要な指標となります。
そのほか、「業界知識」(=対象業界の法規制やビジネスプロセスへの深い理解はあるか?)や、「技術的専門性」(=システム開発に必要な言語やツールに関する豊富な知識・経験はあるか?)のチェックも欠かせません。
過去の実績は、そのままSIerが持つ問題解決能力や専門知識の深さに対する証明となるため、ホームページを確認したり、SIerに直接問い合わせるなどして、実際にどのような業務が得意で、どのような成果を上げているのかを把握しておきましょう。
総合的なサービス提供能力
SIerによっては、システム開発(要件定義→設計→開発→テスト)だけでなく、その前段階やシステム導入後に行う、
- コンサルティング
┗ビジネス課題の分析・IT戦略の提案 - 運用・保守
┗システム安定稼働に向けたサポート・改善 - ユーザートレーニング
┗システム利用者向けの教育支援
まで、ワンストップで対応してくれる企業もあります。
開発のほかに、システム化に向けた企画・立案コンサルティングや、導入してからの細かなサポートも任せられるかどうか、対応可能な業務をSIerに詳しく尋ねてみるとよいでしょう。
プロジェクト管理とコミュニケーション能力
SIerのプロジェクト管理能力や円滑なコミュニケーション能力なども、プロジェクトの成功に直結する重要な要素といえます。
- SIer内で効果的なプロジェクト管理手法が確立されているか
- 問題発生時に迅速かつ適切なサポートを受けられる体制が整っているか
- 想定されるトラブルの防止策を検討する「リスク管理能力」は十分か
- 定期的にプロジェクトの進捗状況を確認できるか
- 顧客側の要望や懸念事項への柔軟な対応力はあるか
など、信頼関係を構築し、共に「パートナー」としてプロジェクトの成功を目指せるSIerかどうか、しっかりと見極める必要があります。
品質保証とセキュリティ対策
- 体系的な品質管理プロセスが確立しているか
- セキュリティ対策が充実しているか
- 第三者機関による認証(ISO 9001・ISO 27001など)を取得しているか
なども重要な指標の1つです。
テスト戦略の充実、「セキュリティ・バイ・デザイン」(=企画・設計段階からセキュリティ対策を組み込むこと)の採用、定期的な脆弱性診断の実施、インシデント対応計画の策定など、具体的な取り組み内容を評価しましょう。
継続的な品質改善とセキュリティ強化への取り組みが、安全で信頼性の高いシステム構築につながります。
財務的安定性と事業継続性
SIerがプロジェクトを完遂するだけの健全な財務状況を維持できているかどうかを確認することも重要です。
財務的に安定したSIerとは長期的なパートナーシップを築きやすく、プロジェクトが途中で頓挫してしまうリスクを低減できます。
なお、事業の安定性・継続性を評価するうえで、事業継続計画(BCP)への取り組みや人材の定着・育成状況などにも注目すると、より総合的な判断が行えます。
6.まとめ -システム開発のご相談は独立系SIerのコンピュータマネジメントへ
いかがでしたでしょうか?
独立系SIerは、親会社やグループ会社の影響を受けないため、SIerの中でも特に顧客のニーズに合わせた柔軟なソリューションの提案やシステム開発を行える点がメリットです。
そんな独立系SIerに分類される当社コンピュータマネジメントは、設立から40年以上の歴史を持ち、教育・不動産・金融・保険・情報通信といった業界を中心に、豊富なシステム開発実績がございます。
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加えて、当社コンピュータマネジメントでは、情報システム部門向けに「IT企画支援」や「属人化防止支援」、「インフラ構築・運用支援」などのさまざまな業務支援を行う情シス支援サービス「ION」を展開しております。
導入・成功事例やサービス内容の詳細については、こちらのページをご参照ください。
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この記事を書いた人
Y.M(マーケティング室)
2020年に株式会社コンピュータマネジメントに新卒入社。
CPサイトのリニューアルに携わりつつ、会社としては初のブログを創設した。
現在は「情シス支援」をテーマに、月3本ペースでブログ更新を継続中。