企業の営業活動やマーケティング、顧客管理、経営判断など、さまざまな場面でデータ活用の重要性が高まっています。
しかし、いざデータを活用しようとした際に、
- 同じ顧客が重複して登録されている
- 表記がバラバラで正しく集計できない
- 古い情報や不要なデータが混在している
といった問題に直面するケースも少なくありません。
こうした不正確で整理されていないデータは、分析結果の精度を低下させるだけでなく、業務効率の悪化や誤った意思決定の原因にもなります。
そこで重要になるのが、データの誤りや重複、表記ゆれなどを修正し、信頼性の高い状態へと整える「データクレンジング」です。
今回は、データクレンジングの概要や目的、必要になるケース、具体的な手法や進め方について分かりやすく解説します。
データクレンジングを通じて業務効率の改善や分析精度の向上を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.データクレンジングとは
データクレンジングとは、データベースに保存された情報の誤りや重複、表記ゆれ、欠損などの不備を修正し、データの正確性や一貫性を高める作業のことです。
「データクリーニング」や「データスクラビング」と呼ばれることもあり、いずれも同じ意味で使用されます。
企業が保有するデータには、次のような問題が含まれていることが少なくありません。
- 入力ミスにより誤った情報が登録されている
- 更新されていない古い情報が残っている
- 同じデータが重複して登録されている
- 表記ルールが統一されていない(全角・半角、表記の違いなど)
- 必要な情報が欠けている(欠損データ)
こうした不正確なデータは「ダーティデータ」と呼ばれ、そのまま利用すると検索や集計が正しく行えなかったり、分析結果の精度にも影響が及び、誤った意思決定や業務効率の低下につながる可能性があります。
データクレンジングでは、こうした問題に対して次のような対応を行い、データを活用しやすい状態へと整えます。
- 入力ミスや誤記の修正
- 重複データの統合・削除
- 表記方法やフォーマットの統一
- 欠損情報の補完
- 不要なデータの削除
上記のような処理を通じてデータの品質が向上し、データ分析やマーケティング、営業活動などにおいて、より信頼性の高い結果を得られるようになります。
データ活用の重要性が高まる中で、データクレンジングは分析や活用の前段階として欠かせないプロセスであり、データの価値を最大限に引き出すための基盤となる取り組みといえるでしょう。
データクリーニング・名寄せとの違い
データクレンジングと混同されやすい言葉に「データクリーニング」と「名寄せ」があります。それぞれの意味は次の通りです。
データクリーニング
データクリーニング(data cleaning)は、データクレンジングとほぼ同義で使われる用語です。
どちらも、誤入力や重複、表記ゆれ、欠損値などを修正・削除し、データの品質を高める作業を指します。
英語の意味では、
- cleansing(クレンジング)=洗浄
- cleaning(クリーニング)=掃除
という違いはあるものの、データ処理の文脈では明確な使い分けはほとんどありません。
なお、「データスクラビング(data scrubbing)」も同様の意味で使われることがあります。
名寄せ
名寄せとは、重複して登録された同一人物・同一企業のデータを特定し、1つのデータに統合する作業を指します。例えば次のようなケースです。
- 「株式会社〇〇」と「(株)〇〇」が別データとして登録されている
- ECサイトと実店舗で同一顧客が別々に登録されている
- 「山田太郎」「ヤマダタロウ」が別人として扱われている
このような重複データを照合し、同一と判断して統合する処理が名寄せです。
データクレンジングと名寄せの関係性
一般的には、「①データクレンジング→②名寄せ」の順でデータ整理を行います。
表記ゆれや誤記などの不整合が残ったままでは、同一データと認識できず、正確な名寄せができないためです。
名寄せは、データクレンジングによって整備されたデータを前提として行われる作業といえます。
データプレパレーション・ETLとの違い
データクレンジングと同様、データ活用に関わる用語として「データプレパレーション(データ準備)」や「ETL」があります。それぞれの意味は次の通りです。
データプレパレーション(データ準備)
データ分析や業務活用を目的として、データを利用できる状態に整えるまでの一連の作業全体を指します。
- 複数システムからのデータ収集
- データの結合・加工
- 形式の変換
- データクレンジング(誤りや不整合の修正)
- 分析しやすい形への整形
なお、データクレンジングは「データプレパレーション(データ準備)」を構成する工程の1つであり、特にデータ品質の向上を目的として実施されます。
データの正確性や整合性を維持し、安心して活用できる信頼性の高い状態へと整備する役割を担います。
ETL(Extract / Transform / Load)
複数のシステムに存在するデータを連携・統合するための処理プロセス、またはその仕組みを指します。
- Extract(抽出):各システムからデータを取り出す
- Transform(変換):データ形式の変換や加工を行う
- Load(格納):データウェアハウス(※データベースの一種)などへ保存する
このうち、データクレンジングは「Transform(変換)」の工程の中で実施されることが一般的です。
2.データクレンジングの目的
データクレンジングが必要とされる具体的な理由としては、次のようなものが挙げられます。
- 正確なデータ分析を行うため
- 業務の非効率や無駄なコストを防ぐため
- 顧客対応の品質を維持するため
- ツール導入やAI活用の効果を高めるため
正確なデータ分析を行うため
企業が保有するデータは、日々の業務の中で蓄積されていきます。
しかし実際には、誤入力や重複登録、表記ゆれ、情報の欠損などが含まれているケースも少なくありません。
こうした不正確で整合性の取れていないデータは「ダーティデータ」と呼ばれ、データ活用の大きな障害となります。
データ分析の結果は、元となるデータの品質に大きく左右されます。
ダーティデータを含んだ状態のまま分析を行えば、得られる結果も不正確になり、誤った意思決定につながる可能性があります。
市場環境の変化が激しい現代では、経験や勘だけでなく、客観的なデータに基づいた判断が求められています。
データクレンジングは、その分析の基盤となるデータの正確性を担保するために不可欠な取り組みといえます。
業務の非効率や無駄なコストを防ぐため
データの不整合がある状態では、分析や業務のたびに手作業で修正や確認が必要になります。
必要な情報を正しく検索できなかったり、同じ顧客に対して複数回営業や案内を行ってしまったりすることもあるでしょう。
こうした手戻りや重複対応は、時間とコストの増加を招き、業務の生産性を低下させる要因になります。
あらかじめデータクレンジングを行い、データを整理しておくことで、無駄な作業を削減し、業務をよりスムーズに進めることができます。
顧客対応の品質を維持するため
重複データや誤った情報をもとに顧客対応を行うと、案内の重複や誤送信が発生し、顧客の信頼を損なう可能性があります。
データは企業にとって重要な資産ですが、その品質が保たれていなければ、適切な顧客アプローチは実現できません。
データクレンジングにより正確で一貫性のあるデータを維持することは、顧客との関係性を維持し、企業の信頼性やブランド価値を守るうえでも重要です。
ツール導入やAI活用の効果を高めるため
近年はCRM(顧客関係管理)システムやMA(マーケティングオートメーション)ツールの普及に加え、AI分析の活用も進み、企業が扱うデータ量は増加しています。
しかし、データの品質が低いままでは、これらのツールを導入しても十分な効果は得られません。
企業が保有する情報を「価値ある資産」として有効活用していくためには、データを常に正確で信頼できる状態に維持しておくことが重要です。
定期的なデータクレンジングによってダーティデータを排除し、データの品質を高めることで、データ活用の基盤が整い、より高度な分析や施策の実行が可能になります。
3.データクレンジングが必要になるケース
データクレンジングは、データの量が増えたり、複数の部門やシステムでデータを扱うようになったりした場合に特に必要になります。
ここでは、企業でよく見られる代表的なケースを紹介します。
データの重複や表記ゆれが発生している場合
顧客データなどの情報を手入力で登録している場合、半角・全角の違いや法人格の有無、住所表記の違いなどにより、同一の顧客が別データとして登録されてしまうことがあります。
この状態を放置すると、検索性の低下や案内の重複、営業活動の非効率化につながるため、データクレンジングによる整理が必要です。
複数のシステムやデータを統合する場合
CRMやMAツール、販売管理システムなど、異なるシステムで管理されていたデータを統合する際には、データ形式や入力ルールの違いによって不整合が発生しやすくなります。
統合後に正しくデータを活用するためには、事前にデータの形式を揃え、重複や欠損を整理する必要があります。
ツールの導入・リプレイスを行う場合
新しいシステムへデータを移行する際、既存データに誤りや不要な情報が含まれていると、その問題も新しい環境へと引き継がれてしまい、トラブルの原因となります。
移行前にデータクレンジングを実施することで、新しい環境での運用をスムーズに開始できます。
データ分析やAI活用を進める場合
データ分析やAI活用においては、入力されるデータの品質に結果が大きく左右されます。
不正確なデータを使用すると分析結果の精度が低下し、誤った意思決定につながる可能性があります。
データ分析やAI活用の効果を高めるためにも、データクレンジングによる事前の整備が欠かせません。
データ量の増加で管理が追いつかなくなっている場合
事業の拡大や長期間の運用によりデータが蓄積されると、古い情報や不要なデータが混在しやすくなります。
データクレンジングにより定期的にデータを整理することで、必要な情報をすぐに活用できる状態を維持できます。
4.データクレンジングのメリット
データクレンジングを行うことで、データの正確性や一貫性が高まり、業務効率や意思決定の質を向上させることができます。主なメリットは次の4つです。
- 業務効率・生産性の向上
- データ分析精度の向上
- 意思決定の質の向上
- コスト削減と企業信頼性の向上
業務効率・生産性の向上
データに誤りや重複、表記ゆれがある状態では、必要な情報を探すのに時間がかかり、分析や業務のたびに修正作業が発生します。
こうした作業は本来不要なものであり、担当者の負担増加や業務の停滞につながります。
あらかじめデータクレンジングによってデータを整理しておくことで、検索や集計をスムーズに行えるようになり、修正作業に費やしていた時間を削減できます。
担当者は本来注力すべき業務に集中できるようになり、企業全体の生産性向上が期待できます。
データ分析精度の向上
データ分析の結果は、分析に使用するデータの品質に大きく左右されます。
誤入力や欠損、重複データが含まれている状態では、分析結果に誤差が生じやすく、適切な戦略や施策を立てることが難しくなります。
データクレンジングによってデータの整合性を確保することで、分析結果の信頼性が向上し、顧客分析やマーケティング施策をより効果的に進められるようになります。
意思決定の質の向上
企業の戦略立案や経営判断は、データに基づいて行われるケースが増えています。
しかし、古い情報や不正確なデータをもとに判断すると、戦略の方向性を見誤り、長期的な競争力を損なうリスクがあります。
定期的にデータクレンジングを実施し、データの正確性と鮮度を常に維持することで、意思決定の根拠となるデータの信頼性が高まります。
意思決定の質とスピードが向上し、迅速・的確な戦略実行が可能になるとともに、変化の速い市場環境にも柔軟に対応できるようになります。
コスト削減と企業信頼性の向上
データの不備は、無駄な営業活動や誤配信、重複対応などを引き起こし、不要なコストの発生につながります。データクレンジングによってこうした無駄を防ぐことで、人件費や運用コストの削減が可能になります。
また、正確な顧客情報に基づいた適切な対応ができるようになることで、顧客満足度の向上や企業への信頼性向上につながります。
5.データクレンジングの代表的な手法
データクレンジングにはさまざまな手法がありますが、ここでは特によく使われる代表的な手法を、実際の作業順に沿ってご紹介します。
①データトリミング
データの先頭や末尾に含まれる不要なスペースや文字を削除します。
検索・照合の精度を上げるための“土台作り”となる処理です。
例:
- 「山田 太郎 」→ 末尾のスペース削除
- 電話番号の後ろにある「(直通)」の削除
②データ型・形式の変換
日付や数値などのデータ形式を統一します。
データの型が揃っていないと、その後の並び替え・計算・集計が正しく行えません。
例:
- 文字列を数値型へ変換
- 日付形式を「YYYY/MM/DD」に統一
- 「090-1234-5678」と「09012345678」の統一
③単位変換
データの単位を統一します。
単位が混在していると誤集計・誤計算の原因になるため、事前に統一しておくことが重要です。
例:
- 重量を「kg」に統一
- 金額を「円」に統一
- 長さを「cm」に統一
④データの正規化(表記ゆれの統一)
ばらつきのある表記や形式を統一します。
同一データが別物として扱われることを防ぎ、分析精度を高めます。
例:
- 「株式会社」「(株)」の統一
- 全角・半角の統一
- 「東京」「東京都」「TOKYO」の統一
- 「男性」「男」「M」の統一
⑤重複データの削除(名寄せ)
同じ内容のデータが複数登録されている場合、それらを統合・削除します。
表記ゆれを修正してから行うことで精度が大きく向上します。
例:
- 「株式会社〇〇」と「(株)〇〇」
- 同一人物が別IDで登録されている
- 電話番号のみ異なるが、氏名・住所が一致している
氏名・住所・電話番号などを照合し、1つのデータに統合します。
⑥情報の最新化
住所変更や社名変更など、古い情報を最新の状態に更新します。
データの正確性を維持するために欠かせません。
例:
- 移転後の新住所へ更新
- 社名変更に伴う正式名称への修正
- 退職済み社員のステータス更新
⑦欠損値の処理(補完・削除)
空欄や不足しているデータに対して、補完または削除を行います。
例:
- 平均値・中央値で補完
- 他の項目から推測して補完
- 分析に不要な場合は削除
⑧異常値の除去
明らかに不自然な値や極端な外れ値(異常値)を検出し、修正または削除します。
異常値を含んだまま分析すると、平均値や統計結果が大きく歪んでしまう可能性があります。
例:
- 年齢「200歳」や「-5歳」
- 売上が通常の何倍もある値
⑨フィルタリング
分析目的に合わせて、必要なデータのみを抽出します。
不要なデータを除くことで、分析効率が高まります。
例:
- 特定地域のみ抽出
- 特定期間のみ抽出
- 欠損値を含むデータを除外
⑩エンコーディング(カテゴリデータの数値化)
文字データを、AIや統計ソフトが扱える「数値」に変換します。
機械学習や統計分析を行う際に必要となる処理です。
例:
- 「はい」→ 1
- 「いいえ」→ 0
- 「赤・青・黄」→ 0・1・2
6.Excelを使ったデータクレンジングの方法
データ量がそれほど多くない場合や目視チェックが中心となるケースでは、専用ツールを導入しなくても、Excelの関数や標準機能を活用することで十分にデータクレンジングが可能です。
関数を活用したデータクレンジング
Excel関数を活用することで、重複チェックや表記ゆれの統一、不要な文字の削除などを効率的に行えます。
■重複・整合性チェックに使える関数
- COUNTIF関数:重複データを検出
- IF関数/SWITCH関数:条件に合わないデータを特定
■文字列の整形に使える関数
- TRIM関数:不要なスペースを削除
- CLEAN関数:不要な改行や印刷できない制御文字を削除
- SUBSTITUTE関数:特定の文字列を置換
- ASC関数/JIS関数:全角・半角を統一
- RIGHT関数:データの一部を抽出
- PHONETIC関数:読み仮名をカタカナで出力
■日付・数値データの整理に使える関数
- DATEDIF関数:期間(年数・月数・日数)を計算
- VLOOKUP関数:別表から対応するデータを抽出
- MAX/MIN関数:異常値の検出に活用
標準機能を活用したデータクレンジング
関数が苦手な場合でも、Excelに標準搭載されている機能を活用することで簡易的なクレンジングが可能です。
■データ整理に使える機能
- ソート(並べ替え):データを昇順・降順に整理
- フィルター:条件に合うデータを抽出
- 重複の削除:同一データを一括削除
■表記ゆれ修正に使える機能
- 検索機能:特定文字列を抽出
- 置換機能:誤表記を一括で修正
(例:「(株)」→「株式会社」)
Excelでできること/できないこと
■Excelでできること
- 数千行程度のデータ整理
- 重複・欠損・表記ゆれの修正
- 簡易的な異常値チェック
- 日付・数値データの整形
日常業務で扱う顧客リストや売上データなどであれば、Excelで十分対応可能です。
■Excelでは難しいこと
- 数万行以上の大規模なデータ処理
- 複雑なデータ統合・高度な名寄せ
- 正規表現を用いた高度な文字列処理
- クレンジング処理の自動化
数万行を超える大規模なデータで、かつ高精度な処理が求められる場合は、SQLや専用のデータクレンジングツールの活用が必要になります。
7.データクレンジングの進め方
データクレンジングを効果的に進めるための基本的な手順としては次の通りです。
- 目的と対象範囲を明確にする
- データの収集と現状確認を行う
- データクレンジングのルールを設定する
- ルールに基づいてクレンジングを実行する
- 修正内容を記録し、標準化する
- 定期的にメンテナンスを行う
Step1:目的と対象範囲を明確にする
最初に行うべきなのは、「何のためにデータを整備するのか」という目的を明確にすることです。
例えば、分析結果の精度を高めたいのか、営業活動で使用する顧客リストの正確性を高めたいのか、あるいはシステム移行に備えてデータを整理したいのかなどによって、求められる品質水準や優先すべきデータ項目は大きく異なります。
営業用途であれば、会社名や電話番号といった連絡先の正確性が重視されますが、全体的な傾向を把握するための分析であれば、多少の欠損や細かな誤差が含まれていても問題にならない場合もあります。
そのため、整備対象は目的達成に直結するデータのみに絞り、それ以外のデータへの対応は優先度を下げることで、工数を抑えながら効率的に作業を進めることができます。
Step2:データの収集と現状確認を行う
目的と範囲を定めたら、次に整備対象となるデータを1ヵ所に集約します。
データが分散した状態では全体像を把握しづらいですが、社内システムから出力したExcelやCSVファイルなど、形式や保存場所が異なるデータを可能な限り1つの環境にまとめることで、重複や不整合が見えやすくなります。
データを集約した後は、すぐに修正作業に着手するのではなく、まず現状のデータ品質を確認します。
「欠損値はあるか」「表記のばらつきはあるか」「同一データが重複登録されていないか」といった観点から、どのような課題がどの程度存在しているのかを把握します。
現状を正しく理解しないまま修正を進めると、想定外の手戻りが発生しやすくなるため、この工程は丁寧に行うことが重要です。
Step3:データクレンジングのルールを設定する
現状の課題を把握したら、次に修正ルールを明確に定義します。
例えば、「住所は都道府県から入力する形式に統一する」「全角英数字は半角に変換する」「日付は『YYYY/MM/DD』の形式にそろえる」といったように、誰が担当しても同じ処理が行える具体的な修正基準を設定します。
さらに、欠損値を削除するのか補完するのか、異常値をどの範囲まで許容するのかといった判断基準もあらかじめ明確にしておきます。
こうしたルールを定めないまま作業を進めると、担当者ごとに解釈や対応が異なり、結果にばらつきが生じてしまいます。
データクレンジングの成否は、作業そのものよりも設計段階で決まるといっても過言ではありません。
Step4:ルールに基づいてクレンジングを実行する
定義したルールに従って、実際にデータを修正していきます。
表記ゆれの統一や不要なデータの削除、異常値の修正、データ型の変換といった処理を行いながら、全体の整合性を高めていきます。
複数のデータベースを統合する際には、同一の顧客や企業が重複して登録されていないかを確認し、該当するものがあれば1つのデータに統合します。
あらかじめ修正基準を明確にしておくことで、名寄せや統合作業においても判断に迷うことなく、一貫性を保ちながら作業を進めることができます。
Step5:修正内容を記録し、標準化する
クレンジング作業が完了したら、どのようなルールに基づいてどの範囲のデータを修正したのかを明確に記録しておきます。
修正内容を履歴として残しておけば、後から内容を確認したり、同じ処理を再度実行できるため、担当者が変わった場合でも品質のばらつきを防ぐことができます。
さらに、作業手順をマニュアル化したり、自動処理の仕組みを構築することで、特定の担当者に依存する属人化を防ぎながら、データ品質をより安定させることができます。
データ品質は時間の経過とともに徐々に劣化していくため、一度整備しただけでは良好な状態を維持することはできません。
そのため、誰が担当しても同じ手順で再現できるプロセスとして標準化しておくことが、継続的に高い品質を保つうえでは欠かせないポイントといえます。
Step6:定期的にメンテナンスを行う
社名や所在地の変更、担当者の異動、システムの更新などが発生することで、登録されているデータは徐々に実態とずれていき、時間の経過とともにデータの品質は自然と劣化していきます。
そのため、半年ごとや年に一度など、あらかじめ定期的な見直しのタイミングを設けておくことで、問題が深刻化する前に対処でき、大規模な修正作業を行わなくて済むようになります。
一度に完璧な状態を目指すのではなく、定期的に小さな改善を積み重ねていくことで、データを安定的に高品質な状態に保つことができます。
8.データクレンジングツールの種類
データクレンジングを効率的に行うためには、目的やデータ規模に合ったツールを選ぶことが重要です。
現在は、手軽に使える表計算ソフトから、大規模データを自動処理できるクラウドサービスまで、さまざまな選択肢があります。
表計算ソフト(Excel/Googleスプレッドシート)
小〜中規模のデータであれば、ExcelやGoogleスプレッドシートでも十分対応可能です。
TRIM関数やCLEAN関数、重複削除機能、フィルターなどを活用すれば、基本的なデータ整形を行うことができます。
特徴
- 追加コストがかからない
- 操作に慣れている人が多い
- 手作業が中心になりやすく、大規模データや自動化には不向き
「まずは試してみたい」「データ量が少ない」という場合に適しています。
プログラミング(Pythonなど)
エンジニアやデータ担当者が在籍している場合は、Pythonなどのプログラミング言語を活用する方法もあります。
複雑な条件処理や自動化が可能で、再現性の高いデータクレンジングを実現できます。
特徴
- 大規模データにも対応可能
- 処理の自動化・再利用がしやすい
- 専門スキルが必要
継続的にデータ整備を行う体制がある企業に適しています。
CRM/SFA/MAツール
顧客データのクレンジングを行いたい場合は、CRM(顧客管理ツール)・SFA(営業支援ツール)・MA(マーケティングオートメーション)などの各種システムを活用する方法もあります。
名寄せ機能や重複チェック機能が搭載されている製品も多く、日常業務の中でデータ品質を保てます。
特徴
- 顧客管理と同時にデータ整備が可能
- 名寄せや重複排除に強い
- 製品によって補完項目や機能が異なる
営業・マーケティング活動と連動してデータを活用したい企業に適しています。
ETLツール/クラウドサービス
部門横断の大規模データを扱う場合は、AWS Glue、Azure Data Factory、Google Cloud Dataflowなどのクラウド型データ統合(ETL)サービスの活用が効果的です。
複数システムに分散しているデータの抽出・加工・統合を自動化できるほか、定常的なクレンジング処理にも対応できます。
特徴
- 大量データを高速処理できる
- スケジューリングや自動実行が可能
- 導入・運用コストがかかる
全社的にデータ分析基盤を整備したい場合に有効です。
目的別に見るツールの選び方
9.データクレンジング実施時のポイント・注意点
データクレンジングは単なる修正作業ではなく、データ活用の土台を整えるための戦略的な取り組みです。
継続的な改善を行うことで、企業の意思決定の質を大きく高めることができます。
ここでは、実施時に押さえておきたい重要なポイントと注意点を整理します。
目的と優先順位を明確にする
データクレンジングを実施する前に、まずは「何のために行うのか」という目的を明確にすることが重要です。
- 部門間でのデータ共有を円滑にするため
- 売上データを正確に把握するため
- 顧客データ管理を効率化するため
など、具体的な活用シーンを想定し、重要度の高いものから優先順位をつけて取り組みましょう。
すべてのデータを一度に完璧に整備しようとすると、工数やコストばかり膨らんでしまいます。
まずは影響度の高いデータから整備に着手し、段階的に改善を積み重ねていくことが成功への近道です。
クレンジングの基準をルール化する
クレンジングの基準が曖昧なまま作業を進めると、担当者ごとに対応が異なり、属人化やデータ品質にばらつきが生じる原因になります。
- 法人格の表記は「株式会社」に統一する
- 電話番号はハイフンなしの10桁数字で登録する
- 売上増減率は小数点以下を切り捨てる
など、具体的な処理ルールをあらかじめ明確にしておくことが大切です。
ルールを文書化し、関係者間で共有することで、判断基準が統一され、安定した品質を維持できます。
また、ルールが標準化されていれば、継続的な運用や自動化にもつなげやすくなります。
ツールと人の目を組み合わせる
大量のデータをすべて手作業で処理するのは、時間やコストの面から見ても現実的ではありません。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールなどを活用し、可能な限り自動化を進めることが、業務効率化の重要なポイントです。
一方で、自動化には次のようなリスクも伴います。
- ツールの設定ミスによる誤処理
- 想定外フォーマットのデータ混入
- 例外的なケースの見落とし
そのため、自動処理に任せきりにするのではなく、最終的には必ず人の目によるチェック工程を設けることが重要です。
「自動化による効率化」と「人による確認」の両立こそが、精度と生産性を両立させる理想的な運用といえるでしょう。
自動化によって効率を高めつつ、人の目で最終確認を行う体制も同時に整えることで、生産性と品質を両立させることができます。
継続的に実施する作業として「仕組み化」する
データは日々増え、変化するため、一度整備しただけでは時間の経過とともに品質は徐々に低下していきます。
- 月1回などの定期的な実施
- 大量のデータを追加したタイミングで都度実施
- PDCAサイクルを回しながらの継続的な改善
など、クレンジングを“単発の作業”ではなく“継続的な運用”として仕組み化することが重要です。
さらに、入力段階でのミスを防ぐために、必須項目の設定や入力フォーマットの統一といったルール整備も並行して進めておくと、後工程の作業負担を大幅に軽減できます。
データ活用を見据えて整備する
データクレンジングは、それ自体が目的ではなく、あくまで効果的なデータ活用を実現するための手段です。
- 現場が自由にアクセスできない
- 分析に適さないフォーマットになっている
- 活用目的に対してデータの粒度(細かさ)が合っていない
このような状態では、どれだけデータを整備しても十分な効果は得られません。
重要なのは、実際にデータを活用する部門(営業・マーケティングなど)と連携し、利用者の視点に立って整備を進めることです。
「整えること」ではなく「活用されること」をゴールに据える姿勢が求められます。
作業前に必ずバックアップを取得しておく
データクレンジングでは、削除や上書きといった変更作業が発生します。
- 誤削除
- 必要データの消失
- 設定ミスによる大量のデータ書き換え
といったリスクを避けるためにも、作業前には必ずバックアップを取得しておくことが重要です。
万が一のトラブルに備え、復元できる状態を確保したうえで作業を進めることが、安全な運用につながります。
データの入力段階でミスを防ぐ仕組みを整える
データクレンジングは既存データの品質向上に有効な手段ですが、あらゆる課題を根本から解決できるわけではありません。
入力時のルール不備や確認体制の不足が原因で、同様のミスが繰り返されるケースも少なくなく、後からの修正対応だけでは限界があります。
表面的な修正にとどまれば、同じエラーが再発する可能性もあります。
そのため、データクレンジングによる事後的な修正対応だけに頼らず、
- 入力ルールの徹底
- システム改修による入力制御の強化
- 担当者への教育・周知
など、データ入力の初期段階でミスを防ぐ仕組みを整えることで、持続的な品質向上につながります。
入力段階でミスを防ぐ仕組みの具体例
①入力フォーマットの統一
- 日付・電話番号・郵便番号などの形式を統一
例:YYYY/MM/DDで日付入力、ハイフンなしで電話番号入力
- ExcelやWebフォームで入力規則を設定する
例:Excelの「データの入力規則」で「数値のみ」や「リストから選択」を指定
②ドロップダウンリストや選択肢の活用
- 入力値を限定することで誤入力を防ぐ
例:顧客ステータスは「新規/継続/休眠」の3択のみ
③必須項目の設定
- 必ず入力してほしい項目を空欄で送信できないようにする
例:氏名・住所・メールアドレスは必須項目に設定
④自動チェック・バリデーション
- 入力と同時にエラーを知らせる(リアルタイムバリデーション)
例:メールアドレスに「@」がない場合は警告表示
⑤テンプレート・マスタデータ活用
- 頻繁に使う情報(部署名、商品名、顧客名)は、あらかじめ登録したマスタデータから選択できるようにする
例:既存の「商品コード一覧」から商品を選択
⑥二重入力・確認画面
- 重要な情報(メールアドレスや金額など)は、2回入力させて一致確認
- Webフォームで確認画面を表示し、ユーザー自身にチェックさせる
10.まとめ
いかがでしたでしょうか?
データ分析基盤の整備やデータ活用に不安を感じている企業様は、ぜひお気軽に当社コンピュータマネジメントへご相談ください。
当社では、システム企画・要件定義などの上流工程から、システム運用・保守、インフラ構築、セキュリティ対策まで、IT関連業務を幅広くサポートする「情シス支援サービスION」を展開しております。
AWSやAzureを活用し、それぞれの用途に合わせた最適なクラウド環境の設計・構築・保守はもちろん、データクレンジングにも対応可能です。
「どのデータを優先的に整備すればいいか分からない・・・」
「重複や表記ゆれの対応が大変そう・・・」
「既存システムとの連携や自動化に不安がある・・・」
「データ活用を推進するための組織体制が整っていない・・・」
といったお悩みにも柔軟に対応いたします。
データ管理や活用でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
Y.M(マーケティング室)
2020年に株式会社コンピュータマネジメントに新卒入社。
CPサイトのリニューアルに携わりつつ、会社としては初のブログを創設した。
現在は「情シス支援」をテーマに、月3本ペースでブログ更新を継続中。




